企業や投資家にとって、社債と米国債の利回りの関係性を理解することは、リスク評価や市場動向の分析において非常に重要です。本記事では、社債と米国債の利回りの違い、影響を与える要因、そして市場環境との関わりについて詳しく解説します。
社債と米国債の基本的な違い
社債と米国債はどちらも債券市場の主要な金融商品ですが、それぞれの特徴と目的は大きく異なります。
社債の特徴
- 発行主体: 一般企業が資金調達のために発行する債券。
- リスク: 発行企業の信用リスクが利回りに影響する。企業の財務状況や業績悪化時にはデフォルト(債務不履行)のリスクがある。
- 利回り: 米国債と比べて高め。これはリスクプレミアム(追加利回り)によるもの。
米国債の特徴
- 発行主体: 米国政府が発行する債券。
- リスク: 信用リスクが極めて低い。米ドル建ての「安全資産」として認識される。
- 利回り: 社債より低めで、通常は市場の基準となるリスクフリー金利(無リスク利回り)として扱われる。
これらの違いにより、社債と米国債の利回りは、同じ債券であっても性質や市場動向の影響を受けて異なる動きをします。
利回りについて
利回りは債券投資の収益性を測る指標であり、社債と米国債の利回りを比較する際の基礎となります。
利回りが意味すること
利回りは市場環境やリスク評価の変化を反映します。
- 利回りが上昇する場合:価格が下落している(信用リスク上昇、金利上昇など)。
- 利回りが低下する場合:価格が上昇している(リスク回避、金利低下など)。
社債と米国債の利回りを比較することで、リスクプレミアムや市場のリスク感度を分析できます。
代表的な社債利回り
次に社債利回りはどのデータを見るといいのかについて記載します。
シンボルはさまざまありますが、ここでは代表例としてOAS (Option-Adjusted Spread) を挙げます。

OAS (Option-Adjusted Spread) とは?
- 定義: 社債の利回りから、同じ期間の米国債利回り(リスクフリー金利)を差し引いたもの。さらに、オプション要因(早期償還などのリスク)を調整して算出されています。
- 役割: 社債の信用リスクや流動性リスクを反映します。
OASが低い場合
- 意味:
- 社債の信用リスクが低い(デフォルトの可能性が低い)。
- 投資家が求める追加利回り(リスクプレミアム)が小さい。
- 解釈:
- 投資家のリスク許容度が高く、社債市場が安定している。
- 米国債に近い低利回りの社債が多いことを意味します。
OASが高い場合
- 意味:
- 社債の信用リスクが高い(リスクプレミアムが増加)。
- 経済的な不安や市場のリスク回避姿勢が高まっている。
- 解釈:
- 社債を発行する企業に対する懸念が増している。
- 社債の利回りが上昇(価格が下落)している。
結論
- OASが低い → 社債の利回りは低い。
- OASが高い → 社債の利回りは高い。
したがって、OASを見れば、社債市場全体のリスク環境や投資家のリスク意識を把握するのに役立ちます。
FREDのサイトより確認することができます。
社債利回りの構成要素
社債利回りには、いくつかの要因が組み込まれています。これを理解することで、社債の動きや米国債との違いを明確に把握できます。
1. リスクフリー金利
社債利回りの基準は、同期間の米国債利回り(リスクフリー金利)です。
2. 信用スプレッド(クレジットスプレッド)
企業の信用リスクに応じて、追加の利回りが上乗せされます。この部分が信用スプレッドと呼ばれます。
3. 流動性リスク
債券が市場で売買されやすいかどうかも利回りに影響します。流動性が低い社債ほど高い利回りを求められる傾向があります。
4. マクロ経済要因
経済成長や金利環境など、外部のマクロ経済要因も社債利回りに影響します。
米国債利回りとのスプレッド(差)の意味
社債利回りと米国債利回りの差は、「信用リスクプレミアム」を示します。このスプレッドは市場のリスク感度を反映します。
スプレッドが拡大する場合
- 原因: 景気後退懸念、企業の信用リスク上昇。
- 影響: 投資家はリスクを嫌い、安全資産である米国債を購入するため、米国債利回りが低下。一方で、社債利回りは上昇します。
スプレッドが縮小する場合
- 原因: 景気回復、企業の信用力向上。
- 影響: 投資家がリスクを取る姿勢になり、社債の価格が上昇して利回りが低下します。
スプレッドは、社債市場全体の健全性や投資家心理を示す重要な指標です。
5. 経済環境が利回りに与える影響
社債と米国債の利回りは、経済環境や金融政策に大きく左右されます。
1. 金融政策
- 利上げ局面: 米国債利回りが上昇し、社債利回りも連動して上昇。ただし、信用スプレッドが拡大する場合もある。
- 利下げ局面: 米国債利回りが低下し、社債利回りも低下する。
2. 景気動向
- 景気拡大期: 社債利回りは安定または低下(信用力向上)。
- 景気後退期: 社債利回りが上昇(信用リスク増大)。
3. インフレ率
- インフレが高いと、金利上昇を見込んで米国債利回りと社債利回りが共に上昇する傾向があります。
まとめー社債利回りと米国債利回りを活用した投資戦略を考察ー
投資家は、社債と米国債の利回りを比較してリスクとリターンのバランスを検討します。
1. 安全重視の戦略
- 米国債を中心にポートフォリオを構築。
- 社債は信用力が高い投資適格債(Investment Grade)を選択。
2. リスク許容度の高い戦略
- 高利回りを狙い、ハイイールド債(High Yield Bond)を組み入れる。
- スプレッドが拡大している時期に購入し、景気回復局面で利益を得る。
3.米国債利回りの上下を考察する
以下の図は、OASの推移と米国債利回りと為替を表したものです。

1ですが、2023年の10月23日ごろ、米国債利回りである次の下図の朱色の急騰と共に、社債利回りも上昇しました。しかしながら、社債は米国債利回りほどは上がらず、米国債利回りと社債利回りが逆転しました。
なぜこの時米国債が売られて5%を超えるほどの金利がつけられたのか。